ポーランド/ Łódź番外編:書籍「中東欧の文化遺産への招待」など
ポーランドはŁódźのレストランについて書く予定でしたが、ちょっと番外編を。
「中東欧の文化遺産への招待」という本を見つけたので読んでいます。
発売されたのは先々月のようで、なかなかマニアックな感じがする本です。
ザッと目次を見てみると、取り上げられている場所の7割以上がポーランド。
中東欧と聞くと幅広い地域を取り上げている感じもしますが、本で扱っているのはチェコ、ドイツ(ベルリン)、そしてポーランドの3国のみ。
「広く浅く」ではないことが功を奏してか、この本ではワルシャワやクラコフといった大都市だけでなく、カトヴィツェやウッチにも言及されています。
ウッチを訪ねたときに行った「ウッチ市博物館」であったり、巨大なショッピングモール「Manufaktura」も取り上げられていて、ここらへんの施設に言及した書籍が出版されるのは本邦初なのではないでしょうか。
ショッピングモール「Manufaktura」は、(立地は中心ではないものの)まさにウッチの人の流れの中心と言える場所でした。
それぐらい巨大で、たくさん人がいました。
地元の方の話によると、ウッチには実はショッピングモールが5個ぐらいあるらしいですが、そうはいってもこの「Manufaktura」が最大のもののようです。
古い工場をリノベートして云々という話は聞いていましたが、個人的に建物自体にはそこまで感銘を受けませんでした。
私の認識不足、知識不足だと思いますが、所詮はどこにでもありそうなショッピングモールで、ブロックやレンガを使って少し違う雰囲気を出しているだけ、という感じ。
なんというか、残しておけばユニークな魅力となったはずの少しアンダーグラウンドな薄汚れた感じを、綺麗さっぱり洗いながしすぎた感じ。
他の先進都市に肩を並べようとショッピングモールを建設したものの、そこは二番煎じ故に愚かしさからか、表面だけを真似しすぎて固有の良さまで失ってしまった、というよくある箱物ストーリーを見てる感じというのか。
それはさておき、このウッチという街は、ポーランドではワルシャワ、クラコフについで第三の規模の街なのですが、観光という観点からみると、見事に無視されている場所です。
それは日本語の情報だけでなく英語の情報においても。
ブロツワフやポズナン、グダンスクといった、ポーランド国内のウッチよりも規模の小さな街よりも圧倒的に情報が少ないです。
だからなのかわかりませんが、ウッチに行く前にいたブロツワフにおいては、会う人ほぼ全員が「ウッチには行かない方がいい」と言ってきました。
それは私がアジア人であること(つまり、目立つ)ということもありますが、それだけでなく、ポーランド人にとっても治安のよろしくない街として知られているようです。
(肉体)労働者の街で、あまり豊かではない人が住んでいた地域、そして時代の流れに取り残され、若干荒廃した地域というのは、近年の流れではアートやカルチャーといったものと結びついて華麗に転身することがよくあります。
有名な所ではベルリンや東ロンドン。
だいたいそういうエリアにはアナーキーな雰囲気があって、しかも生活費が安い。
常に金欠なアーティストにとっては最高のエリアです。
私としては、ウッチを訪ねる前から、そのようなことがウッチでも起きているのだと思っていました。
とはいえ実際には、確かに起きてはいるのですが、まだまだそこまで大きなムーブメントにはなっていないような感じです。
もしかしたら今後何年かの内には、coolな街としてヨーロッパでも知られた街になっているのかもしれません。
ただ個人的に一つネックだと思うのが、ウッチの閉鎖性です。
ウッチは駅を降り立った瞬間から、他のポーランド国内の街とは明らかに違う雰囲気に満ちていました。
ほとんど「殺気」といっても違わないような。
あまり外の人(外国人だけでなく、ポーランドの他の街出身の人も含む)に対して慣れてないような雰囲気が蔓延しているのです。
それは街を歩いても、4日ほど滞在してもほとんど変わることがない印象でした。
お店の人や若い人はフレンドリーなのですが、街全体からはあまりwell-comingな印象を受けませんでした。
街全体にもrun-downな雰囲気が色濃くたちこめていますので、私としては正直住むのは精神的にキツイと感じる場所でした。
とはいえ、イギリスの新聞independentにはこんな記事もありますし、注目している人は密かに注目している街なのだと思います。
話は戻って「中東欧の文化遺産への招待」です。
まだ全編読み終えていませんが、目次が終わって、前書きが始まった瞬間にうんざりしました。
書かれている内容にではなく、本のレイアウトにです。
冒頭にも書いたように、この本は2ヶ月前の出版なのですが、こういうレイアウトの本を読むと、図書館にしぶとく残る20年くらい前に出版された旅行本を読んでいるような気分になります。
私はデザインの専門家でもなんでもありませんが、デザインの真髄は「デザインを意識させないこと」です。
本であれば、文字を読ませることに集中させること。
読者の気を散らすような障害物をできる限り取り除くことですね。
そういう意味で、この本にはデザインの視点が大幅に欠如しているというのか。
端的にいうと、縦書きで文字が詰まっていて読みにくいのです。
これは文字のサイズと余白のバランスが悪い所に由来します。
加えて些細なことですが、ページ番号がオレンジで丸く塗られているのも、非常に目障りです。
表紙のデザインはいいのですが、肝心の本の中身デザイン、レイアウトがあまりreader-friendlyではありません。
執筆陣の中には建築物に関するデザインの専門家はいるようですが。
とはいえ、中身は興味深そうなものが多いので、もう少し読み進めてみます。
(こういう本の場合、書いた側からすると「レイアウトなんていう外形じゃなくて、書いた中身を評価してほしい」と思うのが常なのだと思います。確かに長い目で見ると「中身」の方が重要ではあるのですが、しかし読み手としては「レイアウト」という、外からよく見える形/外形から入らざるを得ないので、そこで引っかかってしまうと肝心要の「中身」の評価にもネガティブな及ぼしてしまいがちです、無意識のレベルで。そこがまた難しい所で、「売ってる商品はいいんだけど売り方がよくない」という話はどこの業界でもよく聞く話ですね。)